澤野弘之 LIVE【emU】2022 ライブレポート

寄稿者:ムジ7 (@MusikSasanQua18) 様

人見記念講堂外にあるロッカーの外観は舞台からの風景

※セットリストはこちら↓

ライブ開催の告知

2022年6月23日に投稿されたこの画像は「新作の組曲か?!」「アルドノア?」「バブル?」と早速波紋を呼びました。果たして、この画像はLIVE【emU】2022発表への布石であり、翌24日18時、ライブ開催が正式発表されることになります。

初回のemUから2回目のemUまで4年空いていたこともあって、1年半というスパンでの開催は(コロナ禍では元から黙って着席で聴くスタイルのemUがフィットするという判断もあるかもしれませんが)ファンを大いに歓喜させました。

天気

2021年2月のemU以来、すっかり天気には恵まれるようになった澤野さんのライブ(2021年のemU前のライブでは、大雪を降らす台風を呼ぶなど雨男症状の悪化が懸念されていたレベルでした)。お天気についてはMCでも「僕のライブはいつも雨が降るので、前のemUで傘をグッズ化してみたら、その途端降らなくなりました」と自嘲気味に語っていました。Program:Aにてこの傘の再販の話をしたところ、Program:Bまでには完売したそうですね(荒木哲郎監督も購入されたとのこと)。

お花

パンフレットで対談した菅野よう子さんからのお花が中央にドンと鎮座していました。そして「ONE PIECE FILM RED」で直々に澤野さんを指名した原作者・尾田栄一郎さんからもその横に置かれているなど、これまでにない錚々たる方々からのお花が並びました。

構成について

ライブの1曲目というのはそのライブの方向性を位置づけると言っても過言ではありません。様々な予測が行われ、筆者といえばNetflixの「TUDUM Japan」スペシャルミュージックステージの印象に引っ張られ「BUBBLE-THEME」を1曲目に期待していました。が、選ばれたのは国内ではLIVE [nZk]006ぶりの演奏となる「DRAGON RISES」。ストリングスにギター、ベース、ドラムと順番に各楽器の魅せ場が用意されているこの曲はやはり1曲目に相応しい選曲と言えましょう。

セットリストの注目ポイント2つ目は「斬LLLア生LL〜 鬼龍G@キLL」「PRO//MARE」「PROMARETHEME」と2曲ずつ演奏された今石洋之監督作品曲たち。キルラキル楽曲のメドレー構成や、「Inferno <×PT>」に近い構成の「PROMARETHEME」は前回のemUで生み出されたものです。他楽曲がそれぞれ作品から1曲ずつの中、「キルラキル」「プロメア」だけ2曲というのはなにか意味ありげと感じてしまいます。今石監督との新作、あるいはfeat. Hiroyuki ImaishiのemUへの布石など。期待は高まりますね。

Hiroyuki Sawano / Project【emU】「Inferno<×PT>」
Hiroyuki Sawano / Project【emU】「Inferno<×PT>」

前半の構成で言うと「DRAGON RISES」「LiVE/EViL」「U & Cloud」「81DIVER」は2017年のemUから、前述の今石監督楽曲群や「κr0nё」は2021年のemUからといったように、2つのライブの要素を上手に取り入れたセットリストであったことがわかります。「81DIVER」を澤野さん達が先にはけてからバンドメンバー(Guitars:飯室博・椿本匡賜 / Bass:田辺トシノ / Drums:藤崎誠人の4名)だけで演奏し休憩に入る流れも2017年と同じでした。人見記念講堂での再演ということで1回目のエッセンスも大事にしつつ、2回目、そして最新楽曲もバランス良く、初めて参加の方から常連の方までが意識されているのを感じました。

「青の祓魔師」や「魔王」は事前の演奏予定作品にも名前があったので、もう1曲ずつくらいは聴きたかった、というのが本音にはなります。個人的には「戦国BASARA」と並んで組曲化を望む作品たちなので今後の展開に勝手に妄想を膨らませています。

鈴木瑛美子さん

「kIng」「KABANERIOFTHEIRONFORTRESS」「ətˈæk 0N tάɪtn <WMId>」での歌唱を担当した鈴木瑛美子さん。「kIng」1曲の楽曲提供のみでemUに大抜擢と、どの曲を歌うのかが開演直前まで散々議論の的になってきましたが、結果澤野さんが充てがったのはElianaさんポジションでした。初参戦とは言えない圧倒的なパフォーマンスは「女型の巨人がいた」との感想が出たほど。高音から低音まで操る細やかな歌唱力と、爆発的な声量。そしてミュージカルの経験で培った表現力は確かにElianaさんポジションを任せたくなる。別レーベルからでも臆することなく声を選んでくる澤野さんの采配の巧妙さ・挑戦の心意気にも感服する一幕となりました。ドラマチックな彼女の歌声は澤野さん楽曲との相性抜群であることが明らかになった今、1曲だけに留まらず劇伴楽曲への参加など今後もコラボしてほしいと思います。そういえば「KABANERIOFTHEIRONFORTRESS」では舞台に登場するのがかなりギリギリだったため「この曲はオフボーカルでいくのかな?」と思った瞬間もありましたね…

鈴木瑛美子 / kIng Music Video(TVアニメ「キングダム」第2クールED)(3.30発売 1stアルバム「5 senses」収録)
鈴木瑛美子 / kIng Music Video(TVアニメ「キングダム」第2クールED)(3.30発売 1stアルバム「5 senses」収録)

色彩

さて、「ライブで聴きたいけど今回はやらないだろうと無意識に予想から外してしまっていたからこそ衝撃の度合いが大きかった曲」No.1、映画バブルOST収録の「色彩」。バブルモチーフやヒビキのテーマ等「バブル」で使われる旋律すべてが融合し1曲で作品を表現しているため確かにやるならこの曲なのです。ボーカルが誰なのか?という最大の課題を…mizukiさんという表現力の化身が解決していきました。火の鳥([nZk]007LIVE “BEST OF VOCAL WORKS [nZk])、close your eyes(LIVE “R∃/MEMBERLIVE【-30k】001)等、他ボーカルへ提供された楽曲も単なるカバーではなく「自分のもの」として歌い上げてきたmizukiさん。イツエ・UNIDOTSでの活動でも顕著に見られるように、mizukiさんの歌唱は歌詞を時に突き刺さるほどに相手に伝えるところに特徴があり、「今よりもっと ずっとあなたのそばがいい」とまっすぐに歌い上げられた日にはもう惚れるしかないんですよ()。

幕間

「81DIVER」を終え演者が全てはけていくと、「立body機motion〜mouth×宣華 ○2LI〜BANSHEE〜MNE〜Inferno〜KINGDOM-DUE〜BATTLEKOUR〜Battle Scars」のメドレーが各作品の名場面と共に流れました。MNEのサビで頭ドッカーンされるガウマンが謎にツボりましたね。「キングダム」では4期の活躍で株を上げまくった成蟜のシーンでグッと来るものがありました。このコーナーは物販に置かれていたサントラたちの販促の意味合いもあったのでしょうかね(メドレーでは流れていませんが「アルドノア・ゼロ」等は売り切れになっていたそうです)

さて、幕間の時間はこれだけではなく、なんと「LilaS」vcpf-ver.の新作映像が流れたのです。前半で「エイティシックス」楽曲は演奏なかったな〜と落胆していたところにこれです。PIANO[-30k]ではピアノ一本での「LilaS」はありましたが、いきなりの完全新作です。この曲も前述の「色彩」と並んで澤野さんとしては久しぶりの甘い癒やしメロディの楽曲。ピアノとチェロのみで情感たっぷりに奏でられることで歌詞がなくても「エイティシックス」最終話に思いを馳せたファンは多かったのではないでしょうか。また、映像でとはいえ伊藤ハルトシさんがご出演されたことで歓喜したファンもまた多かったことでしょう。

SawanoHiroyuki[nZk]:Honoka Takahashi『LilaS』×TVアニメ「86―エイティシックス―」Collaboration Movie
SawanoHiroyuki[nZk]:Honoka Takahashi『LilaS』×TVアニメ「86―エイティシックス―」Collaboration Movie

そしてピアノ+チェロの組み合わせにさらにLacoさんを迎えた「Grey to Blue」もうれしい悲鳴を上げることになった選曲でした。「まれ」楽曲は「mio MARE」や「Song of..」はセルフカバーされ新たに生まれ変わっているものの、原曲を歌うボーカリストの不在もあり作品としては演奏機会に恵まれない現状がありました。なのでここで新たにLacoさんの楽曲となったことで再発見の機会ともなりました。原曲で印象的なピアノのイントロとは今回違ったため、歌い始めるまで「なんの曲?」となったファンも多かったのでは?澤野さんがこの曲に今アプローチするならこうなる…という変化も感じ取ることができましたね。2曲ともいつかファンクラブのMOVIEコンテンツとして公開してほしいところです。

と、いうことでこの幕間はあくまで演者にとっての「休憩」であり、観客にとっては全く休憩ではなく…Program:Aでは映像のあとに「もうすぐ休憩時間が終わります」というアナウンスが入り、「今この時間は一応休憩だったのか…?!」とざわつきが起きました(Program:Bでは演者の準備が早くできたのか、このアナウンスは流れませんでした)

“Attack on titan” suite

2021年のemUで初演された進撃の巨人組曲。本作はオーケストラコンサートも行われているため楽曲自体を聴く自体は他作品に比べると多いです。ətˈæk 0N tάɪtn <WMId>での鈴木瑛美子さんの凄まじさは前述のとおり。「Before Lights Out」「K2-」はバンドの聴かせどころも多く身体が無意識に動いてしまうのを改めて実感しました。「T:T」はmizukiさんが初めて担当することとなり、儚さを感じる歌唱は胸に迫るものがあったものの…Gemieさんの「叫び」も恋しくなってしまいました。

Hiroyuki Sawano / Project【emU】 “Attack on Titan” suite
Hiroyuki Sawano / Project【emU】 “Attack on Titan” suite

“The Seven Deadly Sin” suite

神曲中の神曲「Eri0ne$」の初演が最大の白眉でしょう。弦が厚めの構成ではなく一本ずつのため逆にこういう甘いメロディは芯まで沁み入ります。高らかに大サビを奏でるホルンも気持ちよかったですね。Perfect TimeもNetflixのイベントに続きmpiさん&Lacoさんで定着してきた感があります。次作「怨嗟のエジンバラ」ではこのお二人でのバージョンも収録されるのを期待してしまいます。

Hiroyuki SAWANO / Project【emU】 “The Seven Deadly Sins” suite
Hiroyuki SAWANO / Project【emU】 “The Seven Deadly Sins” suite

“MOBILE SUIT GUNDAM UNICORN” suite

ガンダムUC楽曲はFILM&LIVEなどを含めて幾度も演奏機会はあったものの、組曲としては今回が初演。一気に通して5曲(「UNICORN GUNDAM」は「MAD-NUG」の旋律も含むため実質6曲分)を浴びガンダムUC世界に浸れる至極の時間でした。何度も組曲の動画を見ていたせいか、イントロから澤野さんたちミュージシャンの背後に横浜のガンダムが視えてしまっていました。MOBILE SUIT〜EGOは夕闇に変化していくよな〜など音と映像で一体的に記憶って残るものですね。組曲の演奏は特にギターやピアノのライブ用アレンジが効いているのでただひたすらにミュージシャンのみなさんがかっこよかったです(語彙力)

Hiroyuki Sawano / Project【emU】 “MOBILE SUIT GUNDAM UNICORN” suite
Hiroyuki Sawano / Project【emU】 “MOBILE SUIT GUNDAM UNICORN” suite

“MOBILE SUIT GUNDAM Hathaway” suite

どのような構成での演奏になるか全く未知の世界だったハサウェイ組曲。まずMöbiusはボーカリスト3人が舞台に立ち[nZk]007以来の演奏。Lacoさんのマイクの音量が少し小さめだったのが気になりはしましたが、澤野さんのライブでトリプルボーカル曲を聴けることはなかなかないのでドルビーシネマで聴いたときのように曲の世界観に飲み込まれそうになります。チェロが参戦したことによりより音源に近づいたと言えるでしょう。いつか音源と同じ編成で聴いてみたいものです。
そして、私個人的な聴きどころでいえば「83UeI〜ESIRNUS」における水野さんのチェロでしょうか。情感たっぷりに聴かせつつもどこか寂しさも感じさせる音色はまさにハサウェイの心情に寄り添ったもので作品理解の深さが伝わってくるものでした。またこの2曲はダバオ襲撃戦のシーンで使われた順番と同じなためメッサーでの戦闘や市街地を逃げ惑うハサウェイやギギを脳裏に浮かべた観客も多かったことでしょう。

Hiroyuki Sawano feat. mpi & Laco & Benjamin「Möbius」
Hiroyuki Sawano feat. mpi & Laco & Benjamin「Möbius」

アンコール

emUでもTRACERが聴けたのは大きな収穫でした。作品の劇中でもダンスホールのシーンで流れることもあり、立ち上がって体全体で曲にノリたい衝動を抑えるのがたいへんでした。せめて手拍子くらいはしたかったですが…サントラライブのノリは難しいですね。

Program:Bラストの「ətˈæk 0N tάɪtn <WMId>」だけ、各曲短めに「BLUE DRAGON〜A LETTER〜RE:I AM」を弾いたあとにイントロのピアノに繋がる構成でした。Program:Bのラスト曲はピアノソロか、あるいはBLUE DRAGONのアレンジVer.か?!という期待をいい意味で裏切っていきました。「ətˈæk 0N tάɪtn」は2017年のemUではトリから2番めで、小林未郁さんが澤野さんのライブに参加した最後のタイミングであったため、似たようなアンコールでの演奏というシチュエーションで鈴木瑛美子さんがカバーしていく形は「ボーカリストは変動していくものである」というメッセージも込められているのか…と愚考する次第であります。

MC

MCは最後のみ。まず一通りメンバー紹介を終えたあと、還暦を迎えた飯室さんに赤いちゃんちゃんこ、ではなく赤いライダースジャケットをプレゼントしたことを報告してくれました(Program:Bでは「ライダースーツ」と言い間違えてあわや飯室さんを変身させるところでした)。「これから必ずいつもこれを着てくれるはずなので街なかで見かけたら声をかけてあげてください」と仰っていました。

天気の項でも書いた傘のお話で、最近ブログにも書かれていた「降ると思って持って出かけたら降らず、逆にお天気もつだろうと傘を持たずに出かけたら降る」という天邪鬼エピソードを披露してくれました。実用グッズの折り畳み傘はぜひ売り続けてほしいものです。

パンフレットの対談について、菅野よう子さんと対談できたことについて、「こちらは興味津々で聴きたいことがたくさんあったが、菅野さんは自分の髭くらいにしか関心がなかったと思う」との発言も。詳しくはパンフレットでご確認を。

毎度恒例の怒涛の担当作品告知タイム。「Fate/strange Fake -Whispers of Dawn-」は後半の横文字が読めず「ホワイスパーオブダウン」になり、「七つの大罪 怨嗟のエジンバラ」は「怨嗟」が読めずとっささにKOHTA YAMAMOTOさんに読み方を訊く始末。Program:Aでそのくだりがあったため、Program:Bで「怨嗟」が読めた時には山ちゃんが優しく頷く一幕も。こういう形の業務提携もあるのかと感服しました(澤野さんと山ちゃんはVV-ALKLINEを通して業務提携を結んでいる)。

Program:Bでは最後に、「LIVE【emU】は不定期になってしまうかもしれませんがこれからも続けていきたいと思います」という旨のお話もありました。2021年と今回、年を連続して行ったのは本稿の最初の方でも記述した通りコロナ禍でのいわば特例。これからは今回のように毎年はできないけど開催していくよ、という意味に筆者は捉えました。ボーカル曲だけでなくサントラ曲も毎年名曲が次々と生まれている以上、忙しい中でしょうが両輪でやっていただきたいところです。

最後に、改めて素晴らしい舞台を届けてくださった澤野さん、ミュージシャン、開催に尽力してくださったスタッフの皆さまに大きな感謝を。ありがとうございました。

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