年表
2004年〜2024年 年表
コラム
澤野さんが制作した曲の中で最初に世に放たれたチェン・ミンさん『feel the moon』リリースから今月で20年となります(2004年5月26日リリース)。公式には来年が作家活動20周年となるところですが(本格的に劇伴作家活動を開始したのが2005年)、音龍としては『feel the moon』から起算して一足早くお祝いしていきたいと思います。
改めて、20周年おめでとうございます!
さて、ここでは主な作品を年表形式で並べてみました。編曲などを一部除いているため、全て並んでいるわけではないですが壮観ですね。皆さんの澤野さんはどこからですか?
年表を眺めていると、澤野さんにはいくつかターニングポイントとなるような”出会い”があったことが見えてきてます。
2011年「ギルティクラウン」での荒木哲郎監督との出会い。ボーカル曲を多数制作し、効果的にボーカル曲を劇中に取り入れる荒木監督&三間音響監督の手腕によって、劇伴作家としての新境地を開きました。実はもう少しさかのぼり、2009年「戦国BASARA」での、当時Production I.Gに在籍していた中武哲也プロデューサーとの出会いが荒木監督との縁を作り出す端緒となっています。中武プロデューサーは後にWIT STUDIOを立ち上げ、「進撃の巨人」「甲鉄城のカバネリ」「バブル」を澤野さん・荒木監督と二人三脚で作り出していくこととなります。「進撃の巨人」は、当時ゼノブレイドクロスに制作時間をかけるため当初打診を断る予定もあったところ、荒木監督の熱意に絆され引き受けたことはもはや有名なエピソードですね。その結果「進撃の巨人」は大ヒットし、音楽も澤野さんの代表作と言えるものとなりました!
プロデューサーとの出会いといえば、サンライズの小形尚弘プロデューサーとの出会いも挙げておくべきですね。「機神大戦ギガンティック・フォーミュラ」の音楽が評価され、「機動戦士ガンダムUC」で起用されたのをきっかけに「宇宙世紀に澤野さんの音楽がかかせないと思っていて」と絶大な信頼のもと「NT」「閃光のハサウェイ」の担当を依頼しました。MV撮影のため澤野さんと室屋さんを海外に行かせたりなど、無茶ぶりもある小形Pですが、かねてからの澤野さんが思い入れを持っていたガンダムシリーズに関わるきっかけをもたらした人物です。
そして、その「ガンダムUC」において、主題歌を通してAimerさんと出会うこととなります。『RE:I AM』『StarRingChild』で初の主題歌プロデュースを手掛け、「UnChild」というアルバムを共に制作するに至りました。そして、このコラボレーションを機にボーカルプロジェクトSawanoHiroyuki[nZk]が立ち上がり、こちらも今年で10周年ですね。プロジェクトを通してLiSAさんや岡野昭仁さん、岡崎体育さんと繋がり、楽曲プロデュースの立場で歌い手と関わる機会も増えました。Aimerさんとはその後も3rdアルバム「R∃/MEMBER」までコンスタンスに楽曲を作り続け、2022年の「SACRA MUSIC FES. 2022 -5th Anniversary-」では3年ぶりに同じステージでパフォーマンスを行い、会場を大いに沸かせました。
2022年からはSennaRinさん・NAQT VANEとトータルプロデュースで関わる案件が誕生し、音楽家として新たな舞台に立とうとしてる澤野さん。さらに節目となる今月には「TM NETWORK TRIBUTE ALBUM -40th CELEBRATION-」に『BEYOND THE TIME (メビウスの宇宙を越えて)』カバーで参加したり、来月の「澤野弘之 LIVE[nZk]008」ではASKAさんを自らのステージに呼び込むなど、憧れの存在とのコラボも続々と果たし夢を叶えている最中です。
澤野さんが影響を受けたアーティストである久石譲さんや小室哲哉さんとも違う、澤野さんらしい道を切り開こうとしているところでしょうか。澤野さんの座右の銘を拝借すれば「そこに立ってそのとき わかることばかりさ」(CHAGE and ASKAの『not at all』歌詞)といった心境でしょうか。これからも音楽の世界を進撃していく澤野さんを応援していきましょう!
参考文献
・澤野弘之アーティスト・ブック
・澤野弘之 LIVE[nZk]001〜007 パンフレット
・AV Watch「ガンダムNT 公開前イベントで冒頭23分上映。“ナラティブ組体操”に声優陣も衝撃!?」(https://av.watch.impress.co.jp/docs/news/entaclip/1148375.html)
楽曲『feel the moon』について
今年でリリース20周年となる楽曲『feel the moon』について書きたいと思います。
澤野さんのリリース楽曲として最初の作品でもあるこの楽曲ですが、現在の澤野さん作品にも通ずる点がいくつかあるので、その点も紹介します。
音龍で取り扱っているデビュー20周年の今年。 遡って2004年にリリースされた作品はこの『feel the moon』とボーカルにアレンジされたリナ・パークさんの『FALL IN LOVE』のみになります。 インストバージョンがリリースになってから、改めてボーカルバージョンになるという流れは現在でもよく見られます。
例を挙げると、「青の祓魔師」の『i-AM』『BLUE』が『Too Late To Say』、「アルドノア・ゼロ」の『十61yard』『AcyOrt』が『0.vers』になったように、リリース1曲目の作品が同じような流れを辿っていたことが大変興味深いです。
澤野さんのメロディはピアノの旋律から作られることが多いようですが、歌声を想定していることが多いと様々なインタビューにて答えています。2004年の初リリースからそのような流れになっていったことは、今日の澤野さんの活動に繋がっていると思います。
『feel the moon』という曲は澤野さんファンの中ではまだまだ馴染みが薄いという方も多くいらっしゃるかも知れません。二胡奏者のチェン・ミンさんのアルバムに収録されているため、二胡の愛好家の方達の中でスタンダード曲になりつつあり、よく演奏会等で取り上げられていたりします。
楽曲の特徴としては、初期の澤野さん作品で多いサビで転調をするスタイル。 サビでは二短長(in d-minor)、サビ以外ではト短調(in g-minor)と転調を繰り返していきます。
次に続く『風のDIVA』、劇伴作品だと『motherhood〜me & my mom〜』『bloom』などもサビにて転調をしていきます。 サビのコード進行は前半が「B♭→C→Dm」というのが基本のコードになっており、澤野さんの気に入っているコードが初期作品からしっかりと使用されています。 同じキーで同じコード進行は『melt』『Blume im Meer』『a/z-p1@n05罪vers』などでもサビで使用されていて、大きく動く旋律にサブドミント和音から始まる不安定さとベースキーが上がっていくことでの高揚感を感じることができます。
20周年を迎えた澤野さんの活動ですが、改めて最初のリリース曲からもこんなにも魅力が詰まっています。 そんな節目に初期作品を改めて聴いてみてはいかがでしょうか?
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