澤野弘之 LIVE [nZk]008 ライブレポート「澤野さんの”現在地”を示すライブ」

寄稿者:ムジ7 (@MusikSasanQua18) 様

NHKホール入り口
LIVE[nZk]008の案内

※セットリストはこちら!↓

開演前

 2024年6月2日(日)、雨。そう、でした。散々「雨男」と揶揄される澤野さんのライブも、2019年の-30kLIVE以降自身名義のライブでは雨には降られなくなり、気づけば5年ぶりの雨の中でのライブとなりました。しかも開場前までは晴れ間も見えるような天気で、まさに開場が近づくにつれ雨脚が強くなっていくという気合の入りっぷり。
 びしょ濡れになりながら入場すると、会場内には梶裕貴さん、バンダイナムコフィルムワークス、「俺だけレベルアップな件」製作委員会、フジテレビジョン、「院内警察」スタッフ一同、ポニーキャニオンからのフラワースタンドが並んでいました。梶さんはライブ自体も観に来られており、梶さんのプロジェクト「そよぎフラクタル」などの進展も気になるところです。

Lacoさん

 ライブ会場には箱型のセットが組まれており、「Trollz」のMVを彷彿とさせるものでした。「1曲はセトリ確定したな」とこの時点でニヤリとした観客も多かったのでは。そして18:30を少し過ぎた頃に暗転し、「X」が流れ始めました。同曲で始まるのはLIVE「2V-ALK」以来。順番にミュージシャンたちが箱型のセットの中へと配置につき、いよいよ澤野さんも入場。客席に向かって立つようにジェスチャーし、ピアノの方へと向かっていきます。会場も煽られるがまま総立ちになりクラップで応じていると、一人の女性が入場してきました。曲が終わるにはまだ早いぞ?と思ったのもつかの間、入ってきた女性=Lacoさんはラップで曲に参加してきました。そう、この瞬間にイントロ曲は「Battle Scars」へと姿を変えたのです!原曲のDavidさんではなくLacoさんをボーカルに据えてリビルドされた曲の力で一気に会場は盛り上がっていきました。
 そしてセットから予想された通り1曲目は「Trollz」。音源に近いバンド編成での披露はLIVE2021以来2度目(ビルボードや配信ではやっていますね)。熱量のあるロックの音色と力強いLacoさんの咆哮が、サビで力強く赤に照らされる演出ともマッチ。2番サビのギターの音などが抜けるところはヴァイオリンの音色が入っているなど大先生がいるからこそのアレンジも聴けましたね。
 「Never Stop」筆者は予想していたものの、配信のみで聴ける音源であったため実際にセトリ入りは意外でもありました。THE ANSWERにも通じるエネルギッシュなパフォーマンスでした。

SawanoHiroyuki[nZk]:Laco『Trollz』Music Video

MC①
澤野さん「LacoさんはEOWっていうオシャレなバンドをされてて…」
Lacoさん「ほんとに思っています?(笑)」
澤野さん「思っています!EOWの曲みたいなカッコいい人生をおくりたかった。」
Lacoさん「(Battle Scarsで)生まれて初めてのラップに挑戦しました!楽しかった!」
澤野さん「今日ならではのライブにしたいと思っています。」
「最初のMCで噛みまくってますが、このあとも特に変わりません!」
 「FAKEit」はもはやライブを盛り上げるキラーチューン。オケの部分を辿るピアノの音もライブならではのグルーヴ感を生んでいきます。mpiさんBenjaminさんにラップで参加してもらったバージョンもいつか聴いてみたいなと。

mpiさん×Benjaminさん

 「TRACER」のイントロがかかるとNHKホールは一気にダバオのダンスクラブへ。mpiさん、Benさんのツインボーカル体制となり、「C’mon SHIBUYA!」の煽りと共に観客一同踊り狂っているとワンコーラスで曲は終了。Sike!の掛け声で曲は切り替わり「BITE DOWN」へ。音源では金管が鳴っているところも大先生のヴァイオリンが奏でて、新鮮な音色を与えます。この曲でギルガメッシュとエルキドゥが舞台に見えました(幻覚)ので、開場後の大雨は英霊たちが上空でエヌマ・エリシュ撃ちまくっていたからだと思いました()
 「RUSH」はサビのgold! Soul! Control!のタイミングで照明が客席を照らし出し、合わせて私たちも拳を突き上げ一体感を醸し出していましたね。
MC②
Benさん「澤野さんのライブは5回目くらいの参加です。mpiさんのおかげです」
澤野さん「突然告白するのかと思った!」
mpiさん「渋谷でライブなので、渋谷BOXXでライブをした時のこと(2009年の1st Live「musica」)を思い出して、感無量です」
「今日着てるのはDavidさんが麻布十番でやってるソウルフードハウスのTシャツです!」
2人とも新曲準備中のようです。
Inferno」のコーラスを合唱できたのも5年ぶりで、マサラ上映経験者としてはサビではジャンプするしかなかったです。2人がガロリオのように拳を突き合わせるのも作品リスペクトが感じられて素敵な瞬間でした。

澤野弘之『Inferno』LIVE ver. (Vocal Benjamin&mpi)

Aimee Blackschlegerさん

 まだまだ飛ばすセトリで「DOA」へ。圧倒的バンドサウンドとAimeeさんのノリの良い歌唱でさらに会場のボルテージを上げていきます。1月の「Attack音体感Final」で聴くことができなかった楽曲ですし、澤野さんが心臓を捧げよのポーズをしていたのもニヤリとするポイントでした。続く「Light your heart up」で驚かされたことと言えば、さっきまでディストーションゴリゴリのフレーズを弾いていたバッキーが、この曲ではアコギに持ち替えて爽やかなサウンドを展開するところ。ミュージシャンの多才な部分も垣間見ることが出来ました。また、飯室さんが”Light your heart up if you want to“を歌ってくれていたところにも注目でした!

進撃の巨人OST「DOA」/ 澤野弘之

MC③
澤野さん「今後も新しい曲を作って歌ってもらいたい」
Aimee「Next Song is My Favorite Song」(的な意味なことを仰ってました)
 「Release My Soul」ではイントロで会場から拍手が。それだけ愛されている曲であるということでしょう。ピアノがフレーズに入っているところはMOD版の趣もありますね。

XAIさん

 「DARK ARIA <LV2>」では高音から低音まで操るXAIさんの本領発揮といった歌唱で、田辺さんのウッドベースと大先生のヴァイオリンも生で合わさるからこその妖しさを醸し出していました。

SawanoHiroyuki[nZk]:XAI 『DARK ARIA <LV2>』 Music Video


 「LEMONADE」はLIVE2023の時よりさらにパフォーマンスに磨きがかかっていて、XAIさんがこの間自身のライブやShe is Legendの活動などで得たものを存分に活かしているように見えました。個人的にはShe is Legendでラップに挑戦している新曲も誕生しているため、ぜひ澤野さん曲でもやってみていただきたいところです。
MC④
澤野さん「数年前までずっとライブは雨だったけれど、グッズで傘を作ったら晴れて、傘を置いてない日に限って雨が降る。毎回置いとけってことなんでしょうかね」
XAIさん「雨降って嬉しい。澤野さんのライブの醍醐味というか…オタクの大勝利なんです」
 持ち曲がまだ少ないXAIさんは毎回何をカバーしてくれるのかが予想合戦になりますが、本人が「ガンダム好き」を公称する通り今回もガンダム曲からで「Cage」。これもイントロからピアノが印象的でにも近いようなアレンジでした。XAIさんが歌うと大きく羽ばたいて遠くまで飛んでいきそうなイメージに変わるのもボーカルの違いで楽しいところですね。
 XAIさんはアニゴジ主題歌以降作品の発表がほとんど無かったのですが、ここ最近澤野さんや麻枝准さんと言った才能ある作家の曲を歌い重ねることで技術も表現力もどんどん高まっている気がします。澤野さん作品での持ち曲も増えていくのに期待したいです。

mizukiさん

 「Avid」は歌う回数を重ねるごとに表現が変わっていくように感じます。mizukiさんのこの曲に対するスタンスが変化しているのでしょうか。かつての「aLIEz」のようなmizukiさんの次の十八番ナンバーになっていく気がしますね。ファンが多いのかこの曲でもイントロで拍手が起きていました。
EGO <SODv>」 は一瞬意外な選曲だと思いましたが、UC組曲でもmizukiさんはEGOを歌っていますし、そろそろセトリ入りするのは当然といえば当然でした。SUGIZOさんのギターフレーズをバッキーさんがカバーし、雄大かつ深遠な宇宙を感じさせる演奏となっていましたね。

Hiroyuki Sawano / Project【emU】 “MOBILE SUIT GUNDAM UNICORN” suite
『EGO』

MC⑤
ボーカル紹介で、澤野さんは相手も飲むと思って水飲む&mizukiさんは水を飲まず待ってる、のディスコミ発生、夫婦漫才の様相を呈す。
澤野さん「なんで飲まないんですか」
mizukiさん「余韻を楽しんでたんです!」
澤野さん「もう10年になりますね」
mizukiさん「皆さんいい意味で変わらない」
澤野さん「内心年取ったなって思ったでしょ。mizukiさんこそ変わらない」
mizukiさん「XAIさんがEGOの話をしていて、大勝利してくれてたらと」

 「Keep on keeping on」アルドノアゾンビとしてはテンションMAXでいかざるを得ない曲。バンドの演奏も終始格好良いの一言に尽き、観客の盛り上がりと共にこの日随一の完成度を誇るエモーショナルなステージだったと言っても過言ではないでしょう。

SennaRinさん

 「IVORY TOWER」はピアノとボーカルでサビのみ。原曲だとドライなイメージのこの曲も、しっとりと奏でられることでメロディの美しさが際立つなと。
 「NOD」は1月のリスアニ!LIVE以来のバンド編成での演奏。激しくバンドの音が入ることで完成されるようにも感じるのでLIVE音源が欲しいです(n回目)。 
おりんちゃんのデビュー前から温めていたという「mЁЯR0r」長年日の目を見なかった分の思い入れがあってのセトリ入りでしょうか。Aメロ→Bメロにかけて抑えに抑えていた感情をサビで解放させる、おりんちゃんの表現力の高さも再確認できる歌唱でした。
MC⑥
前日同じNHKホールで行われていたジョン・ウィリアムズコンサートを一緒に見に来ていた。
「隣の外国人が寝てるのかと思ったら曲終わりには拍手してたり、退屈なのか楽しんでるのかどっちなんだって」
澤野さん「おりんちゃんのライブのパンフレットで「許せないことは苦手な食べ物を食べさせてくること」と言っていたのに、(自分はおりんちゃんに)よくこれどう?と食べさせようとしまっていた。恨まれてるだろうなー」「でもおりんちゃんも自分に長い蕎麦みたいなサワーグミを渡そうとしてきた(澤野さんはグミが嫌い)」
おりんちゃん「これなら澤野さんも食べれるかな?っていう愛です」
そして盛大にバンドメンバー紹介を忘れる澤野さん。
「今日はアンコールがないので、ここで忘れたらメンバー紹介しないままになるとこでした!さすがセンナリン!みなさんすいませんでした!」
 「Reaper」ピアノから始まる、儚げをまとったメロディで筆者大好物の1曲。サビで感情を爆発させるように歌う姿が印象的でした。そして「Call of Silence」。これもIVORY TOWERと同じでピアノとボーカルのみで、サビからのワンコーラスのみ披露。進撃の巨人という作品が終わっても、登場人物たちの魂に安らぎを与えようとするかのような歌唱で、筆者は心臓を捧げよポーズをして聴いていました。

澤野弘之『Call of Silence』feat. SennaRin Music Video

ASKAさん

Piano Solo(THANKS〜ON YOUR MARK〜SAY YES)
SAY YESのメロディの最中にASKAさんがステージに登場。拍手の中、ピアノ演奏が終わり次の曲のイントロがかかります。
地球という名の都」ついに”伝説”の瞬間です。ワンコーラス目はほぼ澤野さんのピアノとASKAさんのボーカル(とシンセ)の音だけのため、独特な緊張感があったように覚えています。「口から音源以上」とは、この時間のことを言うのでしょう。ASKAさんの歌唱も歌詞自体もメッセージ性が強く、それに気持ちよくメロディがハマっている。それを生で体感できてしまいました。

SawanoHiroyuki[nZk]:ASKA「地球という名の都」Music Video

 「EVERCHiLD」ASKAさんが「宿題」と言っていて「カバーするならどの曲か?」とこれも予想合戦が繰り広げられましたが、岡野昭仁さんに書き下ろしたこの曲が選ばれていました。澤野さん作詞のこの曲も澤野さんなりのメッセージが強く感じられるもので、わかってしまえばASKAさんにぴったりなのはこれしかない、ですね。
 1番サビからすぐ2番Aメロに入るところに失敗してしまったASKAさん、まさかの「もう1回」をオーダー!ASKAさんの解釈で再構築されるEVERCHiLDの味わい深さ。”Tiny world is so stuffed all day”をコーラスできたのは初演の[nZk]006以来5年ぶり(ちなみに007でも演奏はしているので3回連続のセトリ入り!)。

MC⑦
ASKAさん「ラスサビの半音上がるところもう一回やりたい。何小節か前からお願い」
澤野さん「(畏まって)はい!」(譜面を探す)
さらにもう1回のオーダーにも快く応じるバンドメンバーの素敵さも垣間見える一幕でした。
ASKAさん「僕のライブではざらなのよ」
澤野さん「貴重な経験でした」
ASKAさん「澤野くんの作品は名前を認識する前から聴いていた。ファにどんなコードを乗せるのか?というところに個性を感じた。ちなみにどこが(ASKAさん自身の作品から)影響されたかは全然わからなかった。」「(nZkの現場は)リハからやりやすかった。」
澤野さん「今回ASKAさんが来てくれるので、改めてWikipediaで経歴を見てみました。アニメのお仕事もされているのが意外でした(シティハンターの「十六夜」やFの「LOVE AFFAIR」等)。ジブリの「ON YOUR MARK」はもちろん知っていましたが」
ASKAさん「澤野くんの音楽は来てほしいところに音が来る。メロディが気持ち良い
 アンコールがないということで、あっという間に最後の曲。澤野さんも「毎回チャゲアスの曲を聴く時は1曲目」で、オマージュを捧げた「VV-ALK」という曲を作るなど特別な思い入れのある「WALK」をカバー。コーラスにおりんちゃんを呼び込み、絶対的に特別なコラボレーションが披露されました。

終わりに

あくまで現時点では、ですが今回のセトリは「澤野さんを人にオススメするなら?」そのままほいっと差し出したいプレイリストになるなと。懐かしい曲も最新曲も絶妙なバランスで作品もまんべんなく、ボーカリストの多彩さに至るまで、今の澤野さんの”現在地”を示すようなライブだったように思います。
 澤野さん→ASKAさんという憧れが叶ったシーンも特別でしたが、他にもXAIさん→澤野さんのような構図も生まれてきていて、澤野さん自身は恥ずかしがりそうですが「音楽を通して夢や憧れが実現していく」それを生で見ることができる場でもありました。
また、ライブの音が良かったのも書き残しておこうと思います。おそらくこれまでの澤野さんのライブで一番音が良かったのではないでしょうか。それは箱の良さ―多様なジャンルの音楽を鳴らしてきたNHKホールと言う場所と、3,000人というキャパの丁度良さもあったでしょう。バンドの音がうるさくなく、どの楽器の音もクリアに入ってきて楽しむことが出来ました。

 008で今年の澤野さん名義のライブは最後であることが明言されています。少なくとも半年はないということでとっても残念ですが、今回カメラも入っていましたし配信か円盤化にも期待しつつ、次のライブに向けて日々をEnjoy!することが一番なのかなと思います。
 感情のまま書き出しているので乱文につきご容赦ください。ライブの記憶を残す一助になれば幸いです!最後に改めて、澤野さんをはじめライブを創り上げてくださった全ての方に感謝を。

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